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今を生きる コロンバスにて 北川克己

科学は人

この過去数年間で、科学は人だ、という言葉、昔から知っていましたが、まさに本当だと実感したと思います。
簡単に言うと、なによりも実際に実験をやっているポスドクの能力が一番大事だということです。PIの能力、設備の充実さ、研究費の豊富さよりも、です。勿論、それらも良いに越したことはありませんが、ポスドクの能力がダメな場合はそれ以外がいくら良くてもだめなわけです。バカとはさみは使いようと言いますように、もし、ある一定のことだけをさせて、それ以外をPI本人か他のポスドクで補助するならなんとかなるかもしれません。しかし、本人が良いのに比べてやはり何かがかけてしまいます。研究費的にはそれほど良くなくてもH大やS大にラボを持ちたがる一番の理由は優秀な若い人=大学院生、ポスドクが集まるからということなのでしょう。今更当たり前のことなのですけど、実際に体験してみないとなんというかディープな本当さというものがわからないというもののひとつです。
運もあるでしょうけど、同じプロジェクトを違う人にやってもらうことで、前任者がいかに不優秀だったせいでプロジェクトが進行していなかったか、いやがおうにも明らかになる場合があります。信じられないようにミスによって、たとえば、ヒトの細胞のための実験試料をマウスに使っていたために、いくらやっても上手くいかなかった。そりゃ、ミスはあります。しかし、うまくいかなかったら普通はチェックするでしょう。その段階で気がつくべきのことを気がついていないのです。実際に後任者は実験記録を見ただけで、そのミスを指摘しているのです。
それだけではありません。それに見えないところでいっぱいそういうことをしているに違いありません。こういう人は実績としてゼロなだけでなく、ラボにとってマイナスになっていることも多々あります。止めてもらってよかったのですが、彼の数年分の給料はパーで、私の実績のマイナスになっています。もう少し時間をかけて良い人を探すべきだった、おかしいと思った時点ですぐ首にすべきだったと、私の反省するべき点はたくさんあります。
なにより、私が若かったので、学位を持った人間がそこまで不優秀であるうるのかということを知らなかったのです。信じた私がバカだったのでしょう。
現在私のラボにいる人たちは、もう改善されたか、来られたときから優秀だった(特に最近の方)方ばかりですが。勿論、完璧ではありませんので、想定外のミスをしてくれることもタマにはありますが。
2、3年に一報、一流の雑誌に出していただければ、十分です。4、5年いるなら、2報で、そのうち一報はNCS姉妹に出していただけるのが理想です。時間も重要なファクターだと言うことです。いくら素晴らしい発見をしていても論文にするのに5、6年もかけていては台無しとなってしまいます。実験を早くやれない人というのは指導が非常に難しいです。何かしてくれないことにはアドバイスもできないし、早くやれといっただけで、早くやってくれるわけはないし。じっくりやって持って来て結果が論文掲載可能なものならいいけど、根本的なところで間違っていたり、何かを忘れていたりして、やり直しじゃ、もともと遅い上に、時間が普通より2倍かかってしまうのです。これもPIになって数年やってきてわかったことです。何人も指導しているとこういう人は自然と後回しとなって、気がつくと長い間いるわりに論文が出ていないということになってしまうのです。
こうやって私自身いろいろと学ばさせてもらっています。



by katsumi_kitagawa | 2009-06-21 14:54 | 科学

Associate Professor at Nationwide Children's Hospital, School of Medicine, Ohio State University
by katsumi_kitagawa
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