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今を生きる コロンバスにて 北川克己

Faculty candidate

一昨日の夜はfaculty candidateの方とお食事をしました。その方が日本人なのでStructure biologyのchairのWさんから頼まれてentertainしてくれと頼まれたのです。アメリカに来てから、7年目の方で私よりも恐らく4.5年若いでしょう。ちょうど私がラボを始めたくらいの年代の方です。奥さんは我々の大学院の先輩で彼女もできれば独立した研究をしたいとのことですが、なかなか難しい状況です。しかし、Wさんもその方を取りたいみたいですから、なんとかなるのではないかと思いますが。私としても何かできることがあればしてあげたいのですが。
アメリカでは当然ですが、年齢による差別はありません。しかし、Ph.D.習得後の年数に関してはいろいろと制限があります。論文がたくさんあっても年数をそれだけ経ていれば、当然ということになり、ポスドクを長くやればやるほど、就職は不利になるわけです。極端な話、良い論文が出ていないなら学位はなるべく遅く取った方がましということになります。若手用のグラントに応募できなくなるということが実質的な問題でしょう。学位習得後6年経っているとそれ以降はラボを始めてからの年数に入れるということになります。とは言ってもポスドク5−6年は当たり前の時代ですので、そのくらいは全く問題ないのですが、10年もやっているとよほどすごい論文を発表していないかぎりポジションを取るのは難しくなります。こういうかたは技官のようなポジションを取るしかなくなるわけです。まあしかし、本人さえハッピーなら、一生実験をするという選択もありなのではないかと思うのですが、勿論、給料さえ高くしてくれれば。

それから、若い方に一言助言ですが、上記のことを含めた理由で、もし将来アメリカでfaculty positionを取るつもりがあるなら、学位習得後に日本で1年なり2年なりポスドクをするのは不利になります。この1、2年に論文が出ればいいのではないかと思うかもしれませんが、それはなぜ良くないのかと言うと、それでアメリカにわたって更に2、3年くらいポスドクをやって良い論文を出したとしましょう。業績的には十分faculty positonを取るのには良くても、自分自身がおそらくreadyではないでしょう。なぜなら、まだアメリカに2.3年しかいないからです。英語もそうですが、大学の教授になるにはいろんなことがまだわかっていないはずです。最初からアメリカにいて5、6年経っている人とは大きな違いがあります。
日本では学位習得後の御礼奉公の意味もあって1年短いポスドクをやってからアメリカにくる方、特に優秀な方に多いですが、これは本人に取っては不利になります。良いボスならこんなことはさせないでしょう。むしろ学位習得を遅らせた方がよいくらいです。最初のポスドク先にいるとき、あるいは学位習得後一年以内しか応募できないフェローシップはアメリカにたくさんあります。HFSPあるいはアメリカのポスドク用のフェローシップを取ることはfaculty postionを取るのに有利に働きます。英語で書くフェローシップを取ったことがあるかは大きなポイントになるのです。私の知っている日本人の候補者はもれなくHFSPのlong term fellowshipをもらっていました。今回の方も、そして、私もそうです。



by katsumi_kitagawa | 2007-05-06 14:14 | 科学

Associate Professor at Nationwide Children's Hospital, School of Medicine, Ohio State University
by katsumi_kitagawa
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